JIA港地域会日本建築家協会 関東甲信越支部 港地域会

JIA港地域会 活動報告

第32回 「5G時代の建築」建築家が考える建築の未来

第32回 MASセミナー
2019年11月23日(土)
14:00~トーク、16:00~懇親会
日本建築家協会
JIA館1F建築家クラブ
パネラー
今井均武田有左大倉冨美雄宮田多津夫連健夫田口知子村上晶子
司会
湯本長伯
報告者
武田有左

”5G時代の建築”「建築家が考える建築の未来」と題して、今日の技術革新が進んでいった先の社会を見越し、建築や都市がどう変わっていくのか、また変わらないものは何かを会場にお越しの皆さまと一緒に考えてみました。
人工知能 (AI)・ロボット技術・IoT(Internet of Things)・生物工学・ナノテクノロジー等々といった多岐に渡る分野の新興技術革新を受けて、私達の生活も益々便利になって行くと言われている一方、大切な何かを失ってしまう恐れはないのか・・・それらの先進技術をどの様に活かすことで身の回りの空間が本当に豊かになって行くのか、それぞれの建築家の立場から様々なプレゼンがなされました。

今井均5Gの時代と建築(家)
今井均

今回のテーマで僕はタブレットを駆使して検索に明け暮れている状況を「釣り堀に通いつめている様なもの」ではないかと問い掛けた、時には大海原を相手にして糸を垂れる、そんな新鮮な独自の体験こそ現代の社会における個人に必要なことではないかと、、情報の洪水の中で自分自身に本当に必要な情報とは何か?このことは現代において意外と難しいことに思われる。かつて日本の建築家の大御所と言われたM氏は正月休みに一年分の建築雑誌に目を通していたそうだ、言わば通常は余分な情報を遮ることで、自身の課題に没頭していたと、、。他のことが気になって仕方がないと言うのは現代人の特徴かとも思うが、世の中のあらゆるものの変化が速すぎてついて行くことに明け暮れることで自身を見失うのは残念なことではないか。だからこそ、今『学びて思わざれば則ち罔し(くらし)、思いて学ばざれば則ち殆し』という先人の言葉が重い。現代の日本は人生100歳とも言われる。4世代はおろか5世代に亘る人間がともに暮らす社会にすんでいる、日常の生身の人間としての交流の機会を大切にしたいものである。

今井 資料

武田有左建築の未来を考える・・・
武田有左

5G時代の今日に新たに広まろうとする最先端技術を人に寄り添う形で活かすことで、産業革命以降の機械文明進展の中で失われてきた人と自然の関わりなどを日々の生活空間の中に取り戻すことは出来ないだろうか・・・”5G時代の建築”と題して改めて建築の未来を考えて見た。以下ムービー参照・・・

大倉 冨美雄誰が「情報」を支配するか、で変わる
大倉冨美雄

何が言いたかったかというと、建築家という職業が、うまく進めば未来社会のコーディネート役になるかも、ということ。現実はそうは簡単には行かず、5Gになっても階層の格差が進む以上、特に日本では、このままでは専門職が個人としてはどんどん「下請け化する」という予想です。一般の方には難しい問題かもしれず、表面的な提示で終わりましたが。

この想いは深く、私の在伊経験も関わっていて、「イタリアン・セオリーを考える(仮題)」というサブテーマで神田順東大名誉教授が話したいとのことで予定もされています。

宮田 多津夫 情報速度の最適化は?(宮田多津夫

5Gによって建築空間が変わるかといえば、それほど大きな変化は出ないかもしれない。世の中の情報量とその到達スピードの飛躍的な増加により、建築空間ではなく、パーソナルな空間に変化が出てくるのかもしれない。たとえばEスポーツでは大型映像によるリアルなネット対戦が行われる。そのような要求により映像の大型化はさらに進む限界があり、アリーナ空間での対戦要求が出てくる。しかし考えてほしい。20世紀に人間が発明した文明の利器は、自動車、飛行機などスピードを競いそれを実用化に向けて莫大な資金で開発してきた歴史があるが、そこには常に限界が潜む。たとえば、超音速旅客機として誰もが夢に描いた「コンコルド」は、超音速で起こる爆音が解決できずまた同時多発テロの勃発で航空機需要が急落したこともあり廃止に追いやられた。速度や大容量の増大は人間の機能に弊害はあるため、5Gが産み落とすハイスピードのノイズが人の精神に与える影響があり常に人間が折り合うスピードとは何であるかを考えなくてはならない。5Gの可能性は期待できることもある。だが、5Gや8Kと技術革新の先にあるものが、人類の安全な暮らしであり、本当に人間の幸せに繋がるものか、考えながらの判断が必要になる。

連健夫グローカルに5Gを期待したい
連健夫

Glocalグローカルという言葉があります。これはGlocal(地球化)とLocal(地域化)双方の良さを活かそうという造語です。多くの近代都市はグローバル化によって同じような街並みになってしまいました。これに対し、地域の特徴を活かすために、赤坂のまちづくり協議会では○○らしさを協議し、それを10ケ条にまとめ、建築側(開発業者)に活かしてもらっています。

1995年問題(ウィンドウズ95の販売、インターネット元年)として、素人でも瞬時に専門的情報が手に入るようになり、モンスターペアレンツや医療裁判などに繋がったとも言われています。これはネガティブな側面です。一方、個人が情報を世界に発信することができるようになり、特殊解でも広い範囲からニーズをとらえることができ、クラウドファンディングのような賛同者やお金を集めることが可能になりました。これはポジティブな側面です。

当方が設計した荻窪家族レジデンスで、工事中に事前リノベーションワークショップを実施し、若い建築家に関わってもらったのですが、その変更提案に資金が足りなくなりました。そこでクラウドファンディングを利用して、資金を集め実現させることができました。つまり、地域開放型の集合住宅も新しい情報技術があったおかげとも言えます。5GやAIなどの新技術もそうであって欲しいと思います。

田口知子5Gがもたらす未来とは?
田口知子

AIや通信技術はいまや その進歩を止めるすべはありません。人間にとって利便性の良いものの追及にほって、実は大量の情報が人間の時間を奪い、環境問題も直視できないレベルまで悪化させています。持続可能性とは何か?SDGsでかかげる目標は大切ですが、それをどうやって?ということがイメージできていません。
自分は、最近古民家という存在について、学んでいます。先日行った大平宿という廃村で、炉辺で薪で火を起こし、電気を使わないで暮らす、という体験をしてみました。お互いに助け合って生きる、自然に寄り添う暮らし。不自由もあるけれど、共に生活した人と家族のようなつながりを感じる体験でした。五感を使ったリアルな体験は、人間の根源に大切ななにかを、与えてくれるものかもしれません。

村上晶子5G時代の建築「 建築家が考える建築の未来」
村上晶子

5Gは人々の暮らしを一変させる可能性・・わくわくする反面、何か釈然としない?デジタルデータで音楽を聴くと味気ない。耳に届かない高音域と低音域をカットしてしまうからだ。目に見えないけど皮膚感覚で感じる空間の創造に建築家は関わっている。サイバー空間上に現実世界の空間が再現される。でも、少し考えてほしい。5Gの便利さを享受する前に。UBIQUITOUSの概念とMOMOからの引用を紹介したい。


UBIQUITOUS
・5G-Society 5.0「同時多接続」「低遅延」何時でも何処でも意識せずに情報通信技術を利用できる-高度なUbiquitous-ユビキタスの実現
・ユビキタスは元来キリスト教神学の概念。神が、時間や空間を超越して遍く存在すること
最終的な着地点はいつでもどこでも遍く見られているということなのか?

MOMO
ミヒャエル・エンデの有名な童話。時間泥棒とぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語。モモとは友人の話に耳を傾け、自信をとりもどさせてくれる不思議な力をもつ少女。

“時間をはかるにはカレンダーや時計がありますが、はかってみたところであまり意味はありません。というのは、だれでも知っているとおり、その時間にどんなことがあったかによって、わずか一時間でも永遠の長さに感じられることもあれば、ほんの一瞬と思えることもあるからです。なぜなら時間とは、生きるということ、そのものだからです。そして人のいのちは心を住みかとしているからです。”

建築は、人が自らを定位するための効用がある。目に見えないはかりしえないものと、私たちをつなぐ。建築の介在には空間が存在する。ここでは陽だまりのなかで自分をみつめたい空間-山荘のひとつのシーンをおみせします。

当日の模様

MAS第32回の模様1 MAS第32回の模様2 MAS第32回の模様3 MAS第32回の模様4

アンケート

ご参加された皆様、アンケートへご協力いただき誠にありがとうございました。
ご協力いただいた方の中から一部をご紹介させていただきます。

第32回アンケート1
セミナーに参加されるにあたって、どんなことを期待されて来られましたか?
今回は、「建築の未来」というテーマに基づいてどんな未来についてお話を伺えるか期待していました。
今日の内容を聞いて、共感したこと、興味をもったことをご記入ください。
お手伝いをしてくださっている建築家1年生の方の前向きな意見に、将来の明るい発展を垣間見たように感じた。
その他、今回のセミナーで感じられたことを、ご自由にお書きください。
パネラーの意見は、きちんと考えられて来られ良いことは無論ですが、会場からの意見に興味深いものが多くあった。
今後、セミナーで取り上げてほしいテーマがありましたらご記入ください。
無回答
今後のセミナーについて、以下のどれかに○をつけてください。
また参加したい
第32回アンケート2
セミナーに参加されるにあたって、どんなことを期待されて来られましたか?
毎回楽しく参加させていただいています。今回も楽しいのはまちがいないとの思いで参加してます。
今日の内容を聞いて、共感したこと、興味をもったことをご記入ください。
みなさんをそれぞれ異なった考えをもとにした5Gの話は、とても興味深かったです。
その他、今回のセミナーで感じられたことを、ご自由にお書きください。
5Gのどこを考えるかで、ずいぶん広がりがあるのだと思いました。
今後、セミナーで取り上げてほしいテーマがありましたらご記入ください。
空間の中に流れる豊かさのような感じられるけど現実にあるものではない。そんな感じと空間の関係など。
今後のセミナーについて、以下のどれかに○をつけてください。
また参加したい
第32回アンケート3
セミナーに参加されるにあたって、どんなことを期待されて来られましたか?
建築家の方々が何に重点をおいて設計されているのかを知りたいを思い参加しました。
今日の内容を聞いて、共感したこと、興味をもったことをご記入ください。
設計段階でも地域住民との融和を常に考えておられることが伝わりました。
その他、今回のセミナーで感じられたことを、ご自由にお書きください。
全員参加のためか掘り下げが足りないので、時には重点的な発表も検討して頂けたらと思います。
今後、セミナーで取り上げてほしいテーマがありましたらご記入ください。
無回答
今後のセミナーについて、以下のどれかに○をつけてください。
また参加したい

関連資料(PDF)

  • A4版(セミナー概要、アクセス方法など)
  • A3版(当日講演するテーマについて建築家からのメッセージ)

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