JIA港地域会日本建築家協会 関東甲信越支部 港地域会

JIA港地域会 活動報告

杉並地域会 x 港地域会 国際文化会館 特別見学会+トークイベント「私の一冊」
本を巡りながら、時を繋ぐ 『新・建築家の本棚』

第36回 MASセミナー
日時
2023年8月19日(土)
12:00~
場所
国際文化会館・地下1階 room3
港地域会からの登壇者
田口知子村上晶子

田口知子「新・建築家の本棚」活動報告
田口知子

2023年8月19日、港区の国際文化会館にてJIA関東甲信越支部 港地域会と杉並地域会との共同開催による「新・建築家の本棚」が開催されました。このイベントはJIAの地域会同士の会員交流と、市民参加も可能なイベントとして、本をテーマに語り合う企画です。4名の登壇者が自分のおすすめの一冊について語り、参加される方もそれぞれ本を持参して、自由な雰囲気のなかで語り合う企画です。

今回は国際文化会館の見学会も併せて実施され、会館の宿泊エリア、屋上など、普段見学できない場所も見せていただきました。興味深かったのは、建て替え前の岩崎邸の図面が展示されていたこと。岩崎邸は1955年に建て替えられ、前川国男、坂倉準三、吉村順三の三氏の共同設計による、日米交際文化交流のための国際文化会館として建築されました。この建物の魅力は、旧岩崎邸の7代目小川治兵衛が作庭した古い庭園をそのまま残しながら、庭に調査さえた建築のデザインです。都心とは思えない広大な庭園が美しく、この庭園は2005年に港区の名勝に指定されています。

素晴らしい建築空間のなかで本について語り、考えるというのは、建築家仲間とともに、心躍る企画でした。登壇者したのは、杉並地域会から宮元三恵さんと利光収さん、港地域会からは、村上晶子さん、田口知子の4人で、「私の一冊」について語りました。私の一冊は、「ラダック 懐かしい未来/ヘレナ・ノーバーク・ホッジ著」をとりあげました。ヒマラヤの山岳地方に近代まで伝統的な暮らしを守りながら暮らしているラダック地方において、厳しい気候や開発の遅れた地域にもかかわらず、今の私たちには想像もつかないほど豊かで幸せな人々の暮らしがあるということを、1970年代にスウェーデンの言語人類学者が発見し、長くその場所に住みつき、観察した記録を語った本です。人が幸せであるために必要なことはこんなにシンプルで、自然や人間関係(コミュニティー)伝統宗教の力で、人間が平和に持続可能な暮らし実現していること、自分たちの現代社会の進歩を絶対視する視点を疑わしく感じさせてくれる、印象深い本です。

村上晶子さんは、遠藤周作氏の「沈黙」と「深い河」を、その初版本に近い装丁の本をお持ちになり紹介されました。キリスト教と日本人の関係の核心語っている、と感じられた村上さんの、心の原点ともいえる貴重なお話をお聞きしました。宮元さんは伊藤亜沙さんの「目の見えない人は世界をどう見ているか」を、利光さんは「ラスベガス/ロバート・ベンチューリ」を取り上げられました。それぞれの方の好きな本のお話は、その人の深いところにある関心事を見せてくれます。参加した人たちも、それぞれ本をもってきていただく、というのも素敵なイベントだと思いました。参加者全員の話を聞く時間がなかったのは残念でしたが、このようなイベント、ぜひ継続していけたらと思います。機会があれば、またご参加ください。

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