JIA港地域会日本建築家協会 関東甲信越支部 港地域会

JIA港地域会 活動報告

第20回 街と建築の未来への3つの提言―まずは港区からー

第20回 MASセミナー
2015年10月17日(土)14:00~トーク、16:00~懇親会
日本建築家協会、JIA館1F建築家クラブ
報告者
村上 晶子

MASセミナーは今回で20回を迎えました。ここまで『みんなで考える街と建築の未来』を軸に、街に対する思いや街を形成する要素としての建築の可能性について、テーマに沿って会を重ねてまいりました。今回は未来の街並みと建築に具体的にイメージを提案できる試みとして3つの視点で地域会メンバーから提言し会場の皆様とのセッションを行いました。
3つの視点は『①残したいもの』『②見直したいもの』『③一石を投じたいこと』です。
これらを地域会の建築家から先に提案し、その後会場の方々に付箋をお配りして各々のご意見をお書きいただきました。それらを基にワークショップ形式により全員で活発な意見交換を行いました。未来へ向けて様々な視点で新しい発見もあり充実した時間を過ごすことができました。

第20回 MAS1  第20回 MAS2

村上晶子「地域逍遥 小さいコミュニティの創出へ-区民目線での小さな願い」(村上晶子

①港区で大好きな残したいものは、気が配られたお洒落な空間を大切に思う心遣いです。青山で感じるのは隅々までデザインされた古くて懐かしいものかとスピード感のある変化が同居しているキラキラ感と小さい空間の集積です。
②港区で(東京全部ともいえますが)どうにかしたいことは首都高速道路が六本木と青山を引き裂いていることです。前のオリンピックでつくられましものを今度のオリンピックで見直せたらと願っています。
③そして、住民目線として地域コミュニティの場所の創出にむけてひとつ提案をしました。JIA港地域会会員であると同時に私自身も曽祖父の代から港地域住民です。ここは、変化と刺激に富んでいる街であることと同時に、住民目線で見た時には、故郷不在のエトランゼ感覚に寂しさも感じます。お盆の度に寂しい思いもしてきました。都心も高齢化が避けられない昨今、多世代地域コミュニティを創れる可能性を青山近辺の公共空間にみつけました。青南小学校、生涯学習館、青南小学校第二グラウンド、保育園の4つの公共施設を分断する道路をかけかえて住民の憩えるまとまりを創出できたらと思います。

村上 資料

今井均「郷土を彷彿とさせる地形」(今井均

①僕が残したいものの筆頭は『地形』です。
地形だけが今後もかろうじて郷土の歴史を今という現実のなかで感じる事ができるものだと思うからです。休日の午前中、住みなれた周辺に少し足を延ばしてみると、そこから発せられる場所性をほのかに感じとれることがあります。この坂の下に海がみえていただろう、この気持ちのよい風も昔から吹いていただろうといったような想いが湧いてくることは大事にしたいと思うのです。
②不要なものとしては横断歩道橋です。もともと拙速で作ってしまった感があります。こういった公共のものを同じデザインでつくるなら、それこそコンペなどやらねばならない筈です。日本中が作者不明のまずい構築物で、なおかつ誰の評価にもつながらないといった代物がいまは塗装もはげて哀れです。コーデネィターの連さんより、撤去するにはどうしたらいいかとの宿題をもらいました。せめてオリンピックメインスタジアムの周辺整備の一環にこのことを組み込むべきとお答えしておきたいと思います。
③今の社会に一石を投じるというには大きすぎることでしょうが労働の喜びこそ人生の生き甲斐であるとおもえる社会になってほしいと思います。洋の東西を問わず、中世の時代には職人が尊重されていたと思います。でなければ、あれほどのものが残せる理由はないのです。好きな職業を選ぶことほど社会にとって有益な事もない筈です。技倆に見合った対価が用意されてはじめて受け継がれる社会となります。

今井 資料

大倉冨美雄「街と建築の未来のための3つの提言」(大倉冨美雄

①港区は、丘あり、海辺あり、歴史的な遺産も多く、交通や情報の拠点でもあり、いいものがあり過ぎて、残したいもの(や環境)だらけです。
②そんな中で、具体的な話で進められる実例が生じています。南部に環状4号線の最後の連絡路を造るという話です。
戦後早くからの計画道路だったために、付近は大きな樹木、公園、幼稚園、パーキング、木造住宅など(解体可能が条件)で地域が形成され、結果的に美しい環境が出来上がっています。これはもう道路計画を見直さなければ。
③一石を投じたいのは、どうしても造るなら、地下道ということですが、地下鉄南北線、都営浅草線を越えられたとしても、プラチナ通りの入口・出口、目黒通り、桜田通りとの交差方法が、道路拡張の必要から非常に難しそうです。
こうなったら、むきになって海岸道路と連絡しなくてもいいのではないか。

大倉 資料

連健夫「“イキとツウ”の文化を残したい」(連健夫

①港区で、残したいものは、江戸の「イキとツウ」の文化です。赤坂のまちづくりで感じるのは、参加する人達の誇りです。それがはっきり分かるのは、お祭です。町会ごとに異なる袢纏で、それぞれ着こなしがイキなのである。これは男性も女性も同様、カッコイイのである。これは普段の服や店構えのセンスにも感じます。服の裏地や店の凝った内装という具合です。外国人が多い国際的な雰囲気も継承して欲しいです。港区に住む外国人は多く、オープンカフェなど外国人好みの店は垢抜けた雰囲気があります。
②見直したいもの、は車優先の社会です。人を優先すれば街の活性化に繋がると思います。歩道のガードレールはいかにも味気なく、反対側の歩道と歩道を安全の名のもと道路が完全に分断しており、歩道どおしの繋がりがなく、対面するお店を行き来できないのです。ボラードなどを用いて行き来がしやすくして、人の為の道になればと思っています。
③一石を投じたいことは、良質や美しいといった定性的な判断を建築や街づくり入れるため、確認申請の前に、建築家や住民が関わる協議調整の場を制度として設けるべきと思います。そもそも良質な建築、美しい街づくりは、定量的な判断がベースの確認申請では生み出されません。まちづくり協議会などで建築計画について話し合うことによって、港区らしい、赤坂らしい、建築と街が生まれます。その仕組みを作ることが大切と思っています。

連 資料

田口知子「都心の住まいに必要な公共空間」(田口知子

私は、港区の超都心というブランドイメージに抗して、実は深刻化する高齢化や孤立化の都心住環境への問題意識から「住まいに必要な場所」について考えました。
①残したいものは「自然」と「宗教施設」です。自然が作り出すアメニティーは住まうことにおいて大切な資源であり、精神性を表現した宗教施設は町に必要なものとしてフォーカスすべきと考えました。公に開かれ管理された空間を持ち座禅会やミサを開催する宗教施設は、現在社会の生環境にも大切な場所だと考えます。
②見直したいのは「見捨てられた自然」です。
③一石を投じたいものとして、古川の沿いの見捨てられた公園に焦点をあてました。川沿に作られた階段公園の配置や地形がユニークなのでステージに見立てたイベント空間を提案します。「実現する方法は?」との問いに対し、地元商店街組合や自治組織と一緒になって行政に働きかけ、イベントを仕掛ける、という方法だと思います。町と建築の未来のために、住む人が運営する公共空間、という概念は、地域のつながりを構築し住環境を整える上で大切だろうと考えました。

田口 資料

当日の模様

関連資料(PDF)

  • A4版(セミナー概要、アクセス方法など)
  • A3版(当日講演するテーマについて建築家からのメッセージ)

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